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★Latchkey Child★

★Latchkey Child★

冷たいミズ

あぁ、また朝がきた。

冷たい冷たい朝がきた。

さめることのない、冷たい夢もリアルと同化してしまう。

うそだろう。

そう思うことだって、慣れてしまえば日常になる。

そうやって、毎日ただだらだらとすごしていれば、

いつの間にか、人は年齢を重ね、死んでいく。

そんなことを思いながら

リアルと夢が同化しないように

冷たいミズを飲む。

リアルの僕は、僕であって僕ではないと思い込むための一種のドラッグ。

一緒に飲むと

ただ、のどのあたりにドラッグの塊が通る感触だけがつたわる。

冷たいミズを、もういっぱい。

コップに入れて飲む。

冷たいグラス、冷たい世界、冷たい僕。

いつも、こんなのではないはず、いつものあの感じがない。

ドラッグを見ると、期限切れ。

やっぱりな・・・・・。

新しいドラッグを冷蔵庫から取り出す。

箱の期限は今年の大晦日。

あぁ、もう少しかとか思いながら。

また、ぐっと飲む。

あの感触が、ぼくののど元を過ぎ去るころには。

そこには、夢の僕はいない。

リアルな僕もいない。

存在しないのと同じ、そして今日もスーツを着込んで旅立つ。

一歩外に出ると、そこは戦場だ。

死ぬか、生きるか。

それしかない場所。

昼用のドラッグをのどにつめこむ。

ミズなんて、どこでも売っているのでいい。

夜まで持てばいい。

だから、誰とも話もせずに家に帰る。

今日も生きてこれた。

それだけを確認するための儀式。

君を抱きしめる。

そして、言葉をなげかける。

「愛しているんだ・・・・」

裸の僕は、またドラッグを飲む。

冷たいミズで、裸の君が問いかける。

「それ、何の薬?ラムネ?」

・・・いいや、君にはわからないだろうな。

そんな気持ちでうそをつく。

「ん?まぁ、ビタミン剤かな?」

君は、裸のまま。

また僕に笑顔をふりまく。

「じゃ、シャワーあびてくる」

君がシャワーをあびているころ。

僕は、夢の中にいる。

そして、エデンという名の楽園の夢の中で

ただ、僕は必死に生きる。

あぁ、また僕の一日は終わってしまったんだなと思いながら。

君は、いつも無言で帰っていく。

鍵をポストにつっこんだまま。

いつもの朝がまたやってくる。

僕はまた、

冷たいミズで、ドラッグを一錠 のみほした・・・・。


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